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Novel ストーリー【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 夏樹の物語】

Chapter67 『紺色の絵具』 67-7


「ふふふっ。」

「夏樹くん!」

(遠くなる夏樹に、紫苑は声をかけた。)

「良い天気で、気持ち良いね。 お洗濯日和だね。」

(白いタオルの向こうで、夏樹は振り向き。
手を振った。)

(風に乗る、芝生の匂いに紫苑は目を細めた。)

チリチリチリッ

(アパートを囲む、白い塀の上から。
小さな鈴の音が聞こえ。 紫苑は顔を上げた。)

(見ると小さな黒猫が、小さな歩幅で、
塀の上を移動して来ていた。)

「ニャァ」

(黒猫は、ポンッと、飛び降りると。 紫苑の側に腰を下ろした。)

(迷子にならない様にと、紫苑が付けた。 小さな赤いリボンと金色の鈴が、
可愛らしく。 小さな黒猫の首に、留められていた。)

「おはよう。 クロ。」

(紫苑は微笑み、茂みの向こうの窓辺から、1枚のキャンバスを拾い上げた。)

カタンッ

(イーゼルに立て掛けると。 クロも興味を持ったのか、
側に近寄り、紫苑とキャンバスの前に腰を下ろした。)



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