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Novel ストーリー【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 夏樹の物語】
Chapter68 『忍び寄る影』 68-1
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「チッ・・
言う事を・・聞かねぇ・・なぁ。」
(善は、沈み始めた太陽が。 木の葉に影を落とす、中庭の校舎脇に佇んでいた。
オレンジの夕暮れに染まる校内で。
そこは仄暗く。 どこか湿った空気さえ漂っていた。)
「この身体に・・なれば。
この世界の物に・・触れられるが・・。」
(善は、黒い瞳で。 実体となった自らの小さな手のひらを
冷やかに見つめた。)
「力は・・弱まるか・・?」
ガサッ
(聞こえた物音に。
善は、鋭い視線を向けた。)
トッ
「何してんだよっ? お前っ、こんなとこで!」
(現れたのは、数馬だった。)
(相変わらず、カラフルに飾り付けた数馬の制服は、ぱっと目を引くほど派手で。
幾つも留めたマスコットのバッジや飾りが数馬の歩調に音を立てた。)
(暗い色彩に飛び込んできた数馬の鮮やかな色に。
善は一瞬、目を開いた後。
ニヤリと微笑んだ。)
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