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Novel ストーリー【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 夏樹の物語】

Chapter69 『崩せないもの』 69-1


***

(夕日が暖かに射し込む、美術室の扉をノックする音がする。)

コンコンッ

ガララッ

(中に居た、幾人かの女生徒は、顔をあげ微笑んだ。)

「あ! 佐織、チイも。 どうしたの?」

「紫苑いる?」

(佐織とチイは、並んで。 少し古びた木製の旧校舎にある、美術室に
顔を出した。
焦げ茶色に光る旧校舎の校内は、床や壁も年季が入り。 深い味わいがあり、
木やオイルの混じる独特の香りが漂うその場所は、紫苑の好きな場所だった。)

「あそこ!」

(広い美術室の端の窓辺に、紫苑は腰かけ。 キャンバスに向かっている様だった。)

「ありがと。」

(佐織は、笑顔で、室内に入り。 石膏や、静物を囲んでスケッチしたり、
描き込んでいる生徒たちの間を、歩いて行った。)

「お、佐織じゃん。

今日生徒会じゃなかったのか?」

「早く終わったから。」

(佐織は微笑んだ。)



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