HOMENovel

Novel ストーリー【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 夏樹の物語】

Chapter7 『いつもの朝』 7-10


(焦げ茶色の整えられた髪と、茶色の瞳。 見るからに人の良さそうな、
優し気な笑顔が、紫苑は大好きだった。)

「パパ、今日も早いのね。 帰りは遅いの?」

(長い髪を揺らし、向かいの席に着いた。)

「誠司さん、今週は忙しいの。 国から、大きなお仕事の依頼があったんですって。」

(温かなスープをお盆に持って。 キッチンから紫苑の母が現れた。)

(母の桜は、紫苑と同じく軽やかに。 肩につかないほどのベージュ色の髪を揺らし、
優しく微笑んだ。)

「へえっ。 どんなお仕事?」

(紫苑は目の前のクロワッサンに手を伸ばしながら、興味をもって誠司の瞳を覗いた。)

「内緒。」

(誠司は少しからかうように、微笑む。)

「教えてくれないのね。」

(むくれる紫苑を見て、桜は思わず微笑んだ。)

「ふふっ。 紫苑ちゃん。 誠司さんは難しいお仕事をしてるのよ。

わたしたちに言えない大事なね。」

(エプロン姿の桜は、かわいらしく紫苑に耳打ちした。)

「桜さん。 帰りが遅くてすみません。 夕飯は先に食べていてくださいね。」

「ええ。」



『 次ページへ 』 『 前ページへ 』
このページのトップへ