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Novel ストーリー【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 夏樹の物語】

Chapter70 『夕暮れに染まる』 70-3


(夏樹は言いながら、異空間から解放された辺りを見つめ。
闇から解放された、若い女性が。 何事もなかった様に、通りのベンチの上で
目を覚まし。 呼び掛けられた友だちに笑い掛け。 立ち上がるのを見届けた。)

「良かった。」

(夕暮れに染まる、小さな商店街の路地横で、夏樹は微笑んだ。)

(オレンジ色の夕焼けが、深い紺色の髪を鮮やかに照らし。
深い紺色の瞳に、眩しい光を与えていた。)

(こんな日の光に照らされると、いつもは蒼白に見える夏樹の白い肌でさえ、
温か味を宿したかの様に見え。
そんな横顔を見つめ、菖蒲はどこか穏やかな気持ちになった。)

チリンッ・・

『はっ・・。』

(だが、菖蒲はふと気になり、夏樹に声をかけた。)

「どうか致しましたか?」

(菖蒲の問いかけに、何のことかと。
夏樹は、瞬きし、微笑んだ。)

「ん?」

「何でもないよ?」

「! そうだ。

忘れるところだった。」

(言われて気づいた様に、ぽんと両手をたたいた。)



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