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Novel ストーリー【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 夏樹の物語】

Chapter70 『夕暮れに染まる』 70-8


「実を言うと、歩き出したものの。

結局、何を買えばいいんだろうって、思ってたんだ。」

「ふふっ、そうですね。」

「それにもしかすると、紫苑さんとご一緒の方が、

良いのかもしれません。」

「ん? 何で?」

「・・ああ、外出する理由になるからか?」

『監視する・・なんて理由で、ここに居ても良いことになっているんだ。』

(隣に並ぶ菖蒲を見上げた。 サラサラと流れる様な艶やかな黒髪は、夕日に美しく。
一つに縛った、少し長い後ろ髪が。 歩調に合わせ揺れた。)

(黒の燕尾服は整い。 襟元に留められた小さな赤い羽根のピンバッジが時折光る。)

「いいえ。

本当は、その方が。 楽しいからです。」

(菖蒲は、微笑みながら。 後部座席のドアを開いた。)

ガチャッ

「そうだな。」

(開いたドア前で、夏樹はもう一度、賑わい出す路地を振り返った。)

「夏樹様、体調は大丈夫ですか?」



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