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Novel ストーリー【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 夏樹の物語】

Chapter71 『惹きつける場所』 71-1


***

「夏樹様。 いかがでした・・か?」

(小さな診察室の扉が開き。
目の前で待っていた菖蒲は、すぐに夏樹に声をかけた。)

(しかし、夏樹は手にした大きな茶封筒を顔の前に掲げ、
完全に顔を隠していた。)

「あの・・、夏樹様?」

(戸惑う菖蒲の前で、その場でしゃがみ込みそうな勢いで、
夏樹は落胆していた。)

「っ、どうしよう菖蒲。」

(そう言いながら、まだ夏樹が茶封筒の後ろに。 まるで小さくなる様に
隠れているので、不思議と何だか愛しい気持ちになりながら、
菖蒲は封筒の向こうを覗き込んだ。)

(茶封筒を白い両手がぎゅっと握り、表情が隠れているので、
菖蒲には、紺色の髪しか見えない。)

『勇敢かと思えば、こんな時もあるんですから・・。』

(菖蒲は微笑み。 気遣わしげな瞳で見つめた。)

「ドクターストップですか?」

(もしかしたら、体調が良くなかったのではないかと。
菖蒲は気に掛かっていた。 彩や聖が、配慮してくれたのかもしれないと感じられた。)

(しかし、これからという所で。 街を離れるのは、
辛い事だ。)



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