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Novel ストーリー【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 夏樹の物語】

Chapter73 『夜のひと時』 73-4


「・・。 クラスの皆もきっと心配するよね。」

「ああっ、歓迎会も

まだだもの・・。」

「はっ、明日佐織ちゃんに言わなきゃ。

ケーキを用意してくれているかもしれないっ。」

カリッカリリッ

(青い絵筆を持ったまま。 紫苑は、音がした、
窓辺へ振り返った。)

「あっ、クロ。」

(紫苑は筆を置き、窓辺に寄ると、2階の自室の。 ベランダの窓を開けた。)

(しかし、小さく開けただけで。 紫苑はクロを招き入れなかった。)

「ごめんね。 クロ。

今は入れてあげられないの。」

「あぶないものがあるからね。」

(紫苑はそう言って、部屋に広がっている。
油彩絵具や、ガラスの小瓶の油類を見つめた。)

「ニャァ」

(クロはまるで不満そうに、小さな黒い身体を揺らした。
ちょこんとベランダに腰かけ。 窓の向こうから。 青い絵の具の乗った、
木製パレットの上を、小さな黄色い毛玉の様なヒヨコが。 歩くのをじっと、



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