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Novel ストーリー【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 夏樹の物語】
Chapter74 『満天』 74-9
(完成したばかりの絵は、瑞々しい程の艶やかさで。
同時に、溢れだしそうな紫苑の想いを映し。 それはどこか未完成な未熟さを
含みながらも。 素直で、紫苑らしい仕上がりだった。)
(それでも、自分では。 出来栄えがどうかなど、わからず。
それよりも、そんな自分の絵筆が。 描き出した対象を、描き切れているのか。
不安な思いと共に。 どうであれ、心は筆に乗せきったという充実感が、
紫苑を包んでいた。)
「描けて良かった・・。」
「わたしなんかが描いて良いか、わからなかったけれど・・。」
「描いてみて、初めてわかったの。」
(紫苑は、青い色彩を取り巻く風を描く時。 それを生みだす力を、
想像した。)
(それはただ湧いてくるものではない様に思われた。
特別な力が生みだす。 夏樹が、生み出したものなのだ。
そう感じられて、不思議な感動を覚えた。)
「向き合って。
分かった様な気がするの・・。」
「夏樹くんは、風に
自分を乗せているのね。」
「だからあんなに力強いの。」
「それに気持ちが伝わるみたい・・。」
『わたしが絵を描く時と一緒。』
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