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Novel ストーリー【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 夏樹の物語】

Chapter75 『風見通信』 75-11


(かわいらしい靴の軽やかな足取りで、真紀は本棟の中心部にある研究室の中で。
さらに中央に位置する。 二重ガラス扉の向こうに急いで振り返った。)

(頬を包むように。 丸みを帯びてカットされた明るい茶色の髪が、軽やかに揺れた。)

「せんせ〜。 FOTの静乃さんからですよっ。」

(内線のボタンを押し、真紀は中の彩を呼んだ。)

***

「ん・・? あら、いけない。

報告の時間だったわ。」

「今、出るわね。」

(彩は顕微鏡の前から立ち上がり。 ピンク色にカールした髪を払いながら、
白衣の胸ポケットからデータを入れたメモリーを扉の向こうの真紀に手渡した。)

ガチャッ

「これを送ってあげて。」

「電話代わるわ。」

(真っ赤なネイルの指先が、通信機を受け取り。 白衣と不釣り合いなほど、
赤く艶やかな。
唇が微笑んだ。)

「はい。 先生〜。」

(真紀は、メモリーを手に、手前の通信室へ入って行った。)

ピッ

「こんにちは。 静乃さん。 まだ、授業中じゃなくて?」



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