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Novel ストーリー【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 夏樹の物語】

Chapter75 『風見通信』 75-6


(琥珀色の紅茶から立ち昇る湯気に、夏樹は窓辺から離れ。
資料をソファーに放すと。 座り心地柔らかなソファーに沈み込んだ。)

トサッ

「ふぅ・・。

叱られた。」

(テーブルの上に、白手袋の手が。 千波からの差し入れの焼き菓子を、
丁寧に並べるのを見つめながら。)

(白い両手が、頬を覆った。)

「艶様は、大丈夫ですよ。 夏樹様。」

「それに本日は、白さんも。 大学の講義に出てらっしゃいますし。

・・寝ているかもしれませんが。」

(菖蒲は想像し、ちょっと首を傾げ。 四角い黒縁眼鏡の奥で微笑んだ。)

「そうだね。

ありがと。」

(言いながら。 手を伸ばし、フルーツの乗った焼き菓子に手を触れた時。
小さな風が、窓から吹き込み。 腰元に置いた資料を数枚、床に舞い上がらせた。)

フワッ

パサッ・・

(夏樹は拾おうと、腰を上げたが。 菖蒲の白手袋の手が、
先に拾い上げた。)



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