HOMENovel

Novel ストーリー【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 夏樹の物語】

Chapter75 『風見通信』 75-7


(ほんの僅かに、菖蒲は夏樹に触れ。
屈んで至近距離に近づいた腕が、驚くほど冷たく。 菖蒲は思わず、一瞬
身を引いた。)

『・・!』

(夏樹は気づかず。 冷たい体温が伝わる程の距離で、微笑んだ。)

(白い肌は透き通る様で、見るからに冷たそうだが。 深い紺色の瞳が、
より色深く。 濃さを増して、鮮やかに、菖蒲には見えた。)

「ありがと。」

(菖蒲から資料を受け取り、整えると。
改めて、焼き菓子を拾い上げ。 一口で、頬張った。)

『・・・。』

「いいえ。」

(菖蒲は、美味しそうに食べる様子を見つめながら。 体調がどうなのだろうかと、
気に掛かった。 何かあれば、夏樹は出て行くに違いなかった。)

「夏樹様。

闇化がこのまま緩やかであれば、良いですね。

見ているだけで・・。

力を使えないのは、もどかしいものですね。」

「私も、普段意識しているわけではありませんが・・。

止められていますので、普段使っておりませんので・・。



『 次ページへ 』 『 前ページへ 』
このページのトップへ