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Novel ストーリー【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 夏樹の物語】

Chapter75 『風見通信』 75-9


「こうして居ても。

今みたいに。 時々、風にどやされる。」

「早く、行かないのかって。」

(白い指先で、カップに触れながら。 窓から吹き込む
柔らかな風に、困った様に微笑んだ。)

「闇も、同じなのかな?」

「静まっていても・・。」

「そう簡単に、

消えてくれそうにないな。」

(夏樹は真っ白な両手の指先で、温かなカップに触れた。)

(視線の先は、自室の小さなテーブルの上にあったが。
広がる街の上に、馳せる思いは注がれていた。)

***

「良かったね、紫苑。」

「わたしたち式には参加できないけど、

明日の日曜日には、みんなで見に行けるから。

楽しみね〜♪ チイ!」

(職員室から、静乃と共に出て来た紫苑を。 佐織はチイと笑顔で迎えた。)

「ええ。 紫苑・・、雨宮くん。 誘ってみたら?」



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