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Novel ストーリー【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 夏樹の物語】

Chapter76 『青い鼓動』 76-15


(紫苑の問いかけに、菖蒲は僅かに微笑みながら、首を振った。)

「・・・。 今はまだ。」

(紫苑の表情は曇り。 うつむき気味に、制服の胸元の、大きな赤いリボンを
握った。)

「わたしっ、この絵を・・。」

(両脇の髪が、軽やかに明るいベージュ色の光に揺れ。 赤味を差す頬に
掛かる。)

(菖蒲はそっと、白手袋の手で制止し。 穏やかに微笑んだ。)

「大丈夫ですよ。 お気になさらず、千波さんが先に行っています。

参りましょう。」

***

(場内の奥、中央の開かれた場所を目指し、軽やかに走る千波の側を、
風見ヶ丘小学校の制服に身を包んだ。 小さな少年少女が通り過ぎた。)

タッタッ

(人垣をぬって、歩き出す菖蒲から。
一歩遅れて、紫苑も歩き出そうとした。)

「はい。」

ブブンッ

(数人の列が、紫苑の前を行き過ぎた時。 紫苑は、不思議な気配を感じ。
側を通る、
小さな少年少女の姿を見た。)



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