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Novel ストーリー【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 夏樹の物語】

Chapter76 『青い鼓動』 76-3


「紫苑お嬢様もいらしているんですね。」

(明るい黒い瞳が、四角い黒縁眼鏡の奥で瞬き。
白手袋の手で、開くパンフレットに見入る頬に。 サラサラと流れる細い黒髪が掛かる。)

(なぜか表紙の青い色彩に惹かれ、
タイトルを読んだ時。 ふと、菖蒲の足が止まった。)

「・・・。」

『青い鼓動』

ピルルルッ

「はっ。」

カチャッ

「はい。 菖蒲です。」

「・・・!」

「・・っ、本当ですか!?///」

「実は今、そこに来ています。

お嬢様の絵があると、誠司様にお聞きしまして。」

「はい。 すぐに。」

(菖蒲は興奮気味に、顔を上げた。
白手袋の手がパンフレットを握り締め。 視線の先、正面ゲートへと続く、
外灯の一つ一つや、美術館の壁面に飾られ、風に靡く。 青い旗にプリントされた
流れる様な青い色彩を見た。 気づけば美術館は、青色に染まっている。)



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