HOMENovel
Novel ストーリー【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 夏樹の物語】
Chapter76 『青い鼓動』 76-4
(菖蒲は、すでに切れた通信機を手に、
しばらく茫然と、前方を見上げ。 小さくつぶやいた。)
「・・っ、静乃さん・・。 どうすれば?」
(石畳の通りを両脇に覆い、靡く青い旗の下をくぐりゲートに向かい進んだ。)
(頭上を覆う深い紺色の煌めきが、一歩進むごとに。
光り。 美術館の入り口から。 まるで夜空が覆い尽くしている様だ。)
(星粒のひとつひとつから漂う気配は。
なぜか、一人の人を連想させた。)
『ああ・・、どうか。 機密に触れることではありませんように。』
『いえ。 そうだと分かっています・・。』
『これだけの人が居る・・。』
(橘が、力を使うことになるのではないかと思うと。 菖蒲の心は締めつけられた。)
(だが、同時に紫苑を思い、深い感動が込み上げた。
紫苑は、夏樹を理解しようとして。 描いたに違いなかった。)
「・・千波様。」
(しかし感動してばかりはいられない。 静乃からの警告に、
すでに遠く。 ゲートをくぐり。 入口に入る。 千波の後ろ姿を見つめ、
菖蒲は走り出した。)
***
[「菖蒲くん。 気をつけて。
敵の能力者がやって来るかもしれないから。」]
『 次ページへ 』 『 前ページへ 』