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Novel ストーリー【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 夏樹の物語】

Chapter76 『青い鼓動』 76-9


少女の小さな赤い口元が、魅惑的に笑った。)

(高く結んだ、ツインテールの黒髪が揺れる。)

(少女はゆっくりと、善の周りを歩きながら、可愛らしく話した。)

「違うわね。

あの人にそっくりじゃない?v」

(それを聞くと同時に。 口元に僅かに浮かんだ笑みさえも、
善の顔から消えた。)

(黒く光る瞳が、急速に視線を移し。
突然その視線は艶に注がれた。)

『!』

「はっ・・。」

(艶は思わず息を飲んだ。)

トッ

(視線はまるで、金縛りの様に艶を捕え。 その場から動けなくした。)

「・・っ。」

トクンッ

(艶の胸は高鳴り。 見開かれた黒い瞳は、すぐ目の前に来た。)

(この少年の存在の異和感に、気づいている者は他には居ない。 周りで、見入っている人々は、
まるで。 この少年に取り込まれているのではないかとさえ、艶には思えた。
側に立つ、少女は。 艶の様子を見て、面白そうに、黒い瞳を細めた。)



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