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Novel ストーリー【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 夏樹の物語】

Chapter77 『残像』 77-14


「今日来られて良かった。」

(紫苑は、微笑み。
二人は並んで、強い明かりが照らし出す。 スポットライトの下へ、
美術館最奥の。 メイン会場に飾られた、大きな1枚の絵画の前へ、
歩み出た。)

トッ・・

「!」

『・・・っ。』

(とたんに二人は息を飲んだ。)

(紫苑は思わず、声が出ず。 両手で口元を覆い、
身体を小さく強張らせ。 思わず一歩引き下がった。)

「・・どうしてっ・・。」

「どうして・・。」

(何も言えずに、紫苑の肩は小さく震え。
見る見るうちに、大粒の涙があふれ、次々と頬を伝った。)

「ごめんなさい・・っ。

夏樹くん・・っ。」

「わたし・・。

ごめんね・・。」

(目の前の光景に、夏樹は驚き動けなかった。
深い紺色の瞳が、強い光を放つ1枚の絵画を捉え。 すぐ側で涙する、
紫苑の声に。 夏樹の心は揺さぶられた。)



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