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Novel ストーリー【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 夏樹の物語】

Chapter77 『残像』 77-3


(今すぐ出てみたくなった。)

バサッ

(上着に袖を通す、小柄な背中に。 菖蒲は声をかけた。)

「お供致します。」

(その背中は相変わらず少々細身に見えたが、振り向いた瞳は。
驚くほど色濃く。 深い紺色にきらきらと煌めいていた。)

「ああ。」

***

「・・夏樹くん・・。

一緒に美術館に・・。///」

「ううんっ/// ダメダメっ・・;」

「だって外出が禁じられているんだものっ。」

(紫苑は、小さな青いチケットを手に。 仄かなオレンジの明かりが灯る。
2階の夏樹の部屋の外玄関の前に居た。)

(艶に背中を押されたものの、声をかける理由が見つからない。)

「はぁ・・。」

(紫苑はうつむき。 手元のチケットを見た。
夜の桜ヶ丘の上に、静かに吹き抜けた風に。 左手でそっと、なびく髪を押さえた。)

サワワッ



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