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Novel ストーリー【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 夏樹の物語】

Chapter77 『残像』 77-5


「え?」

(夏樹が答える前に、紫苑は、慌てて2階の外階段を下り始めた。)

トントントントンッ

(軽やかな足取りで下る、紫苑の眼下に。 風見市の温かな夜景が広がっていた。
丘の下には、住宅街。 中央には商店街のある繁華街。
左手奥には、オフィス街に続くビル群の夜景が見える。)

(そして、右手に続く新緑の森。 一番奥、
紫苑の視線の先に、地球が丸く見える様に遠く、細く続く海岸線。)

「はぁ・・っ。」

『夏樹くんに、伝えられたらっ・・。』

***

ガチャンッ

(菖蒲が後ろ手に玄関ドアを閉めた。)

(不思議そうな顔で、振り返る夏樹に。 菖蒲は微笑んだ。)

「美術館ですよ、夏樹様。

この時間に行けば、きっと。 どなたにもお会いせず、

貸し切りで見られます。」

「聖様が美術館の結界を強固にしてくださっていますので、もう安心です。」

(なぜ美術館の結界を強めなければならないのか、夏樹にはわからなかったが。
菖蒲が進めるので、頷いた。)



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