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Novel ストーリー【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 夏樹の物語】

Chapter77 『残像』 77-9


(紫苑は緊張し、その場で爪先立って。 小さく足踏みした。
両手を胸にあて、呼吸を整える。)

(ピンクに紅潮する頬は、可愛らしく微笑んだ。)

「行こう?」

(紫苑は思い切って、夏樹の手を取り美術館へ一歩歩き出した。)

『・・!』

「うん。」

(触れている指先は、氷の様に冷たく。 紫苑の温かな体温を奪うかのようだった。)

『きっと、回復していなくても。 夏樹くんは戻って来るって、

千波ちゃんが言ってた。』

『わたしにも、何か。 出来る事があれば良いのに・・。』

(夏樹は、紫苑の後を歩きながら。
まるで星空の様な、高く広がる天井を見上げ、
両サイドの壁面に掲げられているいくつもの絵画へ興味深げに視線を移した。)

「夏樹くんは初めて?」

(紫苑はそんな夏樹の様子に振り返った。)

「そうだね。 聖は興味ないから、子供の頃連れて行ってもらったことなんてないし。

僕は平気なのに、今回みたいなこともある。 本部にいた頃は、

あまりどこも出かけられる状態じゃないからね。」

(夏樹は黒服の執事達のことを思い出していた。)



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