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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter81 『Ability to・・』 81-11


「お取り致しましょうか? 夏樹様。」

「・・菖蒲・・。」

(目の前に座る誠司の笑顔の手前。 断れずに、夏樹は、菖蒲がサラダを給仕するのを
大人しく受け取った。)

(横顔を見つめながら、紫苑は考えていた。)

『少し、やせたのかな? 夏樹くん・・。』

『どこか、変わったような気がする。』

『近くで見ると、びっくりするくらい・・、紺色の瞳の奥が、

きらきらして・・、夜空みたいに。 遠く・・、吸いこまれそう。』

トクンッ

(紫苑は、不思議な予感に。 手にしたスプーンを止めた。)

「・・・。」

『こんなに楽しいのに。 胸の奥がざわつくの・・。』

(皆の笑い声に混じって、紫苑には何かが聞こえるような気がした。)

『声・・?』

『そう・・。 美術館でも・・。』

『聞こえた気がしたの・・。』

『あれは、夢?』

(紫苑はふと、あの日のことを思い出そうと、目の前の。 大きなガラス張りの窓を、



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