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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter83 『赤い方と青い方、赤いの』 83-12


(店員は、制服の帽子を被り直し。 エプロンをばたつかせて、
貴重な客に向き直った。)

「うわっ! お客さん・・。 モテるでしょうっ!」

「アイス持ち帰りにしますか? っと、種類はこれだけなんですよ。

ミルクにこだわってまして。」

「て、まだ。 俺の勤務時間になってから。 一人目ですよ、お客さん。」

(店員は、客が来たことと同時に、ショーケースとカウンター越しに、
自分の前に現れたこの人物の。 容姿と、醸し出す不思議な気配に。
どぎまぎしながら、車内へ振り返った。)

「今、ご用意しますんで。 少々お待ちください。」

(店員が、背を向けたことを確認し。
メニュー表を見ていた夏樹は顔をあげた。)

「はい。」

(店員が、驚くほどの、白い肌に映える。 深い紺色の瞳が、
不思議な煌めきを含み。 チャンスをつかんだことに微笑んだ。)

キイッ

ドン!

(だが、行動を起こす前に。 夏樹が一人立つカウンターに、
現れた人物が身を乗り出し。 メニュー表の上に肘をつき、夏樹の視界を遮った。)

「ひっひっひっ。 よう、兄ちゃん。 そいつはキャンセルだ〜。」

「こいつは甘い物が食えねー。」



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