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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter83 『赤い方と青い方、赤いの』 83-13


(カウンターに乗り上げる勢いで、車内の向こうへ声を荒げた。
手作りのメニュー表が数枚、下へバラバラと舞い。 夏樹の足元に落ちた。
指をさしながら、振り返った男性は、乱れたスーツ姿で。
まるで、因縁をつけるかのように。 鋭い視線で夏樹を見た。)

「よう・・。 しばらく。」

(男性は、そのままカウンターに肘を置き、手に顎をのせると。
値踏みするように、夏樹の頭の先、美しく艶やかな紺色の髪から。
すらりと細い足先までを。 ゆっくりと見つめたあと。
至近距離に顔を近づけ。 カウンターに寝そべる体勢で、蒼白な顔を覗き込んだ。)

「どうしてここが分ったがわかるか〜?」

「おめー、相当。 ヤバいのに目〜つけられてるぜー?」

(深い紺色の瞳が、ゆっくりと、視線を動かし。 冷たい視線を投げた。)

「ひっひっ。 ヤバいのはお互いさまか〜。」

「兄ちゃん、やっぱりキャンセルはやめだ〜。 1つ追加しろや。」

(男性の風貌に縮みあがった店員は、奥から出て来なかった。)

「ケンカじゃねーさー。 出てこいや。」

(短い赤髪の男性は、夏樹よりはるかに長身で。 店員でなくとも、
この様子を見た通行人は。 完全に、夏樹が脅されていると見えたが、
恐ろしくて。 誰も助けられなかった。)

「狐次郎。」

「邪魔しに来たのか?」

(それまで、口をつぐんでいた夏樹が。 つぶやいた。)



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