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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter83 『赤い方と青い方、赤いの』 83-5


シュボッ・・

(行き過ぎる人の流れのなかで。 風に消えぬよう、片手で覆いながら。
煙草に火を点けた。)

(繁華街は、まだ人混みが多く。 この中で、目的の人物を探すのは、
困難にさえ思えたが。 今回は、探しているのではなかった。)

(白くくゆる煙に、目を細め。 視界の先に、小さな。 移動販売車を捉えながら。
スーツ姿の一人の男性が。 眩いショーウィンドウから距離を置き。
仄暗い、歩道橋下に、佇んでいた。)

「ふぅ〜・・。」

「まだかねー・・。」

(実は、その場に長い間。 待っていたわけではない。
ただ、目的のその人物に会う事を。
幾年か前から、長らく待ち望んでいた。)

「ひっひっ。 噂が本当か、確かめさせて

もらおうじゃねーか。」

「ガセネタだったら、ただじゃおかね〜ぜ。 あのガキ〜。」

(男性は、ニタリと微笑むと。 再び、深く一息。 煙を吐いた。)

「ふぅ〜・・。 気が急くねぇ〜。」

「元気にしてるかぁ〜、あの分からず屋は〜。」

「お目付やくにもあいさつしたしよー。」

「そろそろ顔見せても良いころさー。」



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