HOMENovel

Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter85 『花弁』 85-11


回廊の上を滑る。 ローブに施された繊細な装飾と共に、
セナの美しい佇まいを引きたてていた。)

(長いたもとから覗く手が握る。 背丈ほどもある、美しい設えの魔法の杖は。
そばで見るだけで眩く。)

(近寄るものに、畏敬の念を抱かせたが。
一見、冷たくとさえ見えるだろう、その透き通るようなガラスにも似た瞳の眼差しは、
どこか温かく。)

(たとえ、冷たく悪態をついても。 本心ではないと、自然と感じさせる。)

「私の馬鹿弟子はどうした?」

「・・。 光の魔術を受け継ぐどころか、

時期王に、禁術を、施すとは・・。」

「・・。

なぜ、連絡して来ない。」

「ああ、そうだ。

あいつは、闇の魔術にうつつをぬかし。

光の上位魔術を学ばなかった・・。」

「今日は、もういい。

おまえも、休みなさい。」

(回廊の先、場内の最奥。 離れに存在する、
一つの塔の前に歩き進み。 そこで、一人考え込んでいた思考を停止し、
侍女に穏やかな視線を向けた。)



『 次ページへ 』 『 前ページへ 』
このページのトップへ