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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter85 『花弁』 85-12


(その先は、王室の者。 許された者だけしか、
入ることが許されない場所だ。)

「おやすみなさいませ。」

(侍女は両手でスカートの裾を少し上げ、深く頭を下げると。
その場を後にした。)

コッ・・

(頭上に、わずかに浮かんでいた雲が、風に流れ。
その間から、仄かな夜光が。 塔の入口に射し込んでくる。)

(セナの、美しい装飾が施された魔法の杖の上に。
ゆるやかに束ねられた、透き通る髪の上に。
優しく光は射し。)

(暗雲垂れこめるセナの心に。 僅かな休息を与えているようだ。)

コッ・・

(セナは、石造りの塔のゲートをくぐり。
中へ足を踏み入れた。)

ピチャンッ

コォォォォーッ

(不思議に青く光る、塔の内部は。
レンガの様に組まれた青い石で出来ており。 その間を、自然に。
湧き上がる清い水の流れが通り。 ところどころ、石の隙間から、
壁を伝い。 足元の石へと。 澄んだ水が流れ。 あちこちで小さな川を作っていた。)

(そこは室内でありながら、
そこかしこに、小さな緑が生え。 天窓から射し込む夜光に照らされる。
小さな洞窟のようにさえ見える。)



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