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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter85 『花弁』 85-13


(空気さえ、澄む様に思えるその場所の
冷やりとする夜気を吸い込み。 セナは心を整え。 奥へと進んだ。)

コッ・・

(緑茂る塔内の中央。 天窓から射し込む光の中心に、
1本の、みごとな。 大きな樹が根を下ろしている。)

(土がないその場所で。 樹の根は、青いレンガの間、流れる清い水から、
存分に栄養を得ていた。)

(樹の枝の、隅々にまで、ほのかに、ピンクに色づく無数の花が花開き。
それは、少し満開を過ぎた頃のように見えて。)

(十分な、美しさを感じさせたが、その樹の前に、
ひざまずく一人の人物は。 まるで、祈る様に。
その樹の下で、両手を合わせ、目を閉じていた。)

「また一つ散ってしまったわ・・。」

(女性のひざの上に、小さな花びらがひとひら舞った。)

(薄布のドレスが、青い石の上にひらりとやわらかに揺れ。
うつむく女性の長い金の髪が、そっと流れる。)

「セナ。

わたしには、この子たちを救う力は、もうないのね。」

(女性は、室内に現れたセナの気配に気づき。
顔を上げた。)

「けれど、これで、良かったのよね?」

「この世界の均衡が崩れたのは・・。 わたしたちを外の世界に、



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