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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter86 『理由』 86-1


パサッ シュルッ・・ チリッ

(慌てて白いシャツに袖を通しながら、窓際の。 机の上に置かれた、黒い腕時計と
赤い翼の開いた、小さなピンバッジを白い片手が拾い上げ。 部屋を横切った。)

[「メッセージ、聞いてくれたかしら?」]

[「何度も、入れているのに。 返事がないから。」]

(どこか艶のある、女性らしい声が、窓際に置かれたノートパソコンから。
聞こえてきた。)

(開いた窓から入る風が、レースのカーテンを揺らし。 日差しが、パソコンの乗る、
机の上に注いでいた。 明るく反射するモニターの画面には、ピンバッジと同じ紋章が、
映されている様だ。)

「・・ふっ。 学校でも、たくさん起こってるんだよ。 休みの日は、街に出てるから、

しばらく本部には戻らないよ。」

「だから研究所にも・・。」

(言いながら、姿見の前に来た夏樹は。 ネクタイを締めながら、そこに映る自身の
顔色にため息をつき。 眉根を寄せた。)

「それより、聖の結界内に侵入してきた能力者が、誰なのか。

調べてくれないか?」

[「どういうことかしら。」]

「彩さんの、国家生命科学研究所では。 国内の能力者を全て管理しているって、

晃さんから聞いた。」

「どうして、話してくれなかったんだ? 僕を診ているのはそのためか。」



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