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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter86 『理由』 86-17


(紫苑に詰め寄ったソラの目線に、小さな赤い片羽根のピンバッジが、目に留まった。
手がかりを見つけた予感に、ソラは思わず身を乗り出し、紫苑に手をのばした。)

「ちょっと、天野、何してっ。」

(異変に気付いた佐織が、教室に戻ろうとした時だった。)

「あっ。」

ドッ ガタタッ!

(後ろから入って来た人影が、佐織を追い抜き。 紫苑の前に出ると、
自身で紫苑を庇いながら、ソラを遮った。)

「・・何してる。」

「昨日ので、凝りなかったのか?」

「・・。 下手したら、そこの2人も、巻き込まれていたのに。」

「・・、僕の周りに近づくな・・。」

(夏樹のソラに向けた視線に。 一番驚いたのは、紫苑だった。
深い紺色の瞳の奥には、静かな炎の様な揺らめきが灯り。 射る様な強い視線は、
ソラを遠ざけ、息を飲ませた。)

『夏樹くん・・っ。』

(冷やりとした空気が、教室を覆い。 不思議な、圧力にも似た気配が。
夏樹の身に纏わりつき、柔らかに流れ出しては。 その波動は、冷たく。 ソラの頬を
打ち、側に立つ。 ミイの足元を震わせた。)

「・・闇の気配がします。」

(ピュアは、静かにつぶやきながら、そっと。 夏樹を見た。)



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