HOMENovel

Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter86 『理由』 86-3


「・・・っ、茶化さないでくれ。

モニター切ってたのは、今着替えてたから・・。 ふぅっ、もう出かけるから。」

[「くすくすっ。 めずらしいわね。 余裕がないのは、遅刻しそうだから?」]

[「あれだけ状態が変わっても、戦闘では落ち着いて見えるけど。」]

(胸元の、「2-A」と書かれた風見ヶ丘高校の校章の隣に、「FOT No.3」と刻まれた
赤い羽根のピンバッジを留め終えると。 夏樹は、モニターの前に、勢い良く
姿を現し。 画面をオンにすると、両手を机につき。 彩に抗議の視線を向けた。)

「余裕あるように見える?

少なくとも、僕はいつも必死だよ。」

「国の上の人たちは、僕ら能力者を、恐れて特別扱いするけど。」

「僕は、万能じゃない。 どうやったら、闇を無くせるのか。

いつも願っているんだ。」

(画面にうつむいた、深い紺色の前髪の奥で、紺色の瞳が、強く光っていた。)

(彩は一瞬たじろぎ、息を飲んだ。)

[「・・っ。」]

『信じさせてくれと、深い紺色の瞳が、見つめてくる。』

[「・・・。 もちろんよ。

私も、国中の人も。 それを願っているわ。」]

(モニター通信は、静かに音を立てて。 彩の方から、切れた。)



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