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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter86 『理由』 86-4


ピコンッ

***

(FOT本部近くに創設されている、国家生命科学研究所の。 所長室の中で。
彩は、途切れた画面を前に、静かに。 椅子の背もたれに、身を埋めた。)

「・・ふっ、随分じゃない。」

「嫌な役回りだわ。 聖君ばかり信用されて。」

「そこまでお見通しで、それでも、力を貸そうっていうのね・・。」

「ずるいわ。 はぁ、私がずいぶん汚い大人みたい・・。」

「くすくすっ。」

(彩は、白衣の上に掛かる。 高く横に束ねた、ピンク色にカールする髪を、
片手で払った。 銀のピアスが揺れ。 白衣の胸元にかかる、細い銀の十字架の
冷やりとした重さを。 意識の奥で感じた。)

「『それを聖が望んでいるなら。 僕は、力になりたい。』・・か。」

一体、どんな手を使って、そこまで彼を惹きつけたのかしらね?」

「彼の周りで、闇は起こる・・。 どうして・・・。 どうして彼に、

力を使わせなければ、いけないの。」

「・・欠片さえ手に入れば。 多くの人を救う力になる・・。 わかっているわ。

わかっているのよ・・。」

「だけど、彼にはそんな理由通用しないわ。 とっくに、見透かされているわね。」



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