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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter86 『理由』 86-5


***

キイッ カチャン

(白い指先が、2階のドアに鍵をかけ。 夏樹は、細い外階段を、
静かに下り始めた。)

(すでに遅刻だと分っていたが。 とても急ぐ気にはなれない。)

(視線の先、高い丘の上から見渡せる、風見市の景色を。 夏樹は、目を細めて見た。)

サァァッ

(風が、深い紺色の髪を撫で。 先へ行くようにと促したが。 数日前から気になり、
今確かめた事実が。 重く圧し掛かり、歩き出せずにいた。)

『狐次郎の言いたいことは、

闇を無くして、欠片を回収し。 人々を助けようということとは。

違う目的が。』

『FOTを巻き込み、動いているということだ。』

『裏では、お金や権力が動いている。 彩さんの研究が、何かを生み出そうと

しているらしいことも聞こえてきていた。』

(深い紺色の瞳が、遠く見える。 水平線の輝きに、瞬いた。)

『大人の事情なんて、僕には分らない・・。』

『何を信じて良いのか、わからなくなる。』

(先ほどまで、親しみを込めて、夏樹を迎えてくれている様に感じていた景色が、
急に遠ざかって感じられた。)



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