HOMENovel

Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter86 『理由』 86-7


(アーチを出た先で、夏樹は立ち止り。 白いアーチに刻まれた、「snow drop」の
文字と。 温か味のある二棟隣り合わせて続く、二階建ての白いアパートを見上げ、
静かに空を仰いだ。)

「・・夏樹様?」

トッ

(出掛けにかかってきた、彩からのコールに。 外で、待つ様に言われた菖蒲は。
近くに白いリムジンを停車させ。 夏樹が出てくるのを待っていた。)

(聞かれたくない話ではないかと察し、菖蒲は夏樹を迎えに、二階へ上がらなかったが、
「snow drop」のアーチを見上げ。 その場から離れようとしない夏樹に、
菖蒲は声をかけた。)

(夏樹は、穏やかに微笑み、振り向いた。)

「どうしよう、菖蒲。」

「ここに、いなければいけない、理由が。

無くなった・・。」

***

(古びた小さな、日本家屋の一室で。 室内の半分を、占領してしまうベッドの上に、
ソラは、座っていた。)

(朝日は、すぐそばにある、小さなすり硝子の窓から室内を照らし出していたが。
まだ、動き出せずに。 腰を下ろしたまま。
開いた自分の手のひらを、そっと見つめていた。)

「・・《闇の力を秘めし、鍵》・・。 《解き放て》・・。」

「えっと・・、《時の守護》・・。」



『 次ページへ 』 『 前ページへ 』
このページのトップへ