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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter86 『理由』 86-8


(大きな左手を見つめ、水色の瞳が瞬いた。)

「・・・、なんも起こんね〜な・・。」

「そりゃ、そーか。 呪文言えば、できるもんじゃね〜って、

漫画にもよく書いてあるよな・・。」

(手のひらには、何の変化も起こらず。 そこはいつも通り、少し埃っぽいとさえ
思えるくらいの、小さな自分の部屋のままで。 すり硝子の向こうから射し込む朝日も、
ソラにはなんだか、霞んで見えた。)

『あれだけ不思議なことが起こって。 異世界から来た、ピュアと出会って。』

『魔法らしい攻撃で、身体中痛えほどになったのによ・・。』

「目が覚めても、変わんね〜のな。」

「いや、普通の人間なら。 出来ね〜のがあたりまえだ。」

「俺は出来る。 できる・・。 う〜ん。」

(ソラはベッドの上であぐらをかきながら。 両腕を組んで、目を閉じ、
眉間にしわを寄せた。)

「ぷっ、くすすっ///」

「おはようございますですv ソラさま。」

「その呪文は、《守護の祈り》。 大切なものを隠す時に使いますがv

隠した場所に、触れなければ。 その物を取り出すことは、出来ませんです。」

(ベッドの向こうから聞こえた声に、ソラは顔を上げた。)



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