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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter87 『決行』 87-11


トッ

ガチャッ・・

(校舎そばに停められた、大きな白いリムジンの後部座席のドアを、
白手袋の手が開いた。)

(夕暮れに車体が反射し、黒の燕尾服がオレンジ色に染まっている。
四角い黒縁眼鏡が夕日を映し。 奥の瞳が、穏やかに微笑んだ。)

「お帰りなさいませ。 夏樹様。」

「お嬢さまは、ご一緒では?」

(その場は、すでに、異空間の中で。 実際の校舎そばにそっくりな、創り出された
別空間の中だった。)

「うん。」

「少し、調べたいことがあるんだ。 僕も、試してみようと思う。」

「力を使わずに、ここを去れば。 この街の人たちの闇化が止まる訳じゃないんだ。」

「だとしても、遅らせることが、出来るかもしれないから。」

(夏樹は言いながら、後部座席に乗り込み、鞄から、いくつか。
静乃から送られてきた資料を取り出し、膝の上に広げた。)

「僕が原因なら、抑える方法を、見つけないと。」

(資料を白い指先がめくり、うつむく深い紺色の前髪の奥で、
真剣な瞳が、次に闇化しそうな資料のデータを見つめた。)

「? それは、どういう・・。」



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