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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter87 『決行』 87-15


「周りの人を、危険に巻き込むに違いない・・。 これは僕の我がままだ。」

「それでも、ここに居たいんだ。」

『守ると決めたからなんて、言いわけだ・・。』

『許されないと、わかっているけれど・・。』

『ここに・・。』

(瞳を閉じ、白い両手が顔を覆った。 瞳の奥に笑顔が浮かび、
忘れられなかった。 まるで、《ひよこ》の録音機能に収まったように。
その声は、夏樹の耳に残った。)

『「お仕事から帰ったら、夏樹くん。 snow dropにいるよね。」』

『・・帰っても、良いだろうか?』

(白い指先の間から、開いた紺色の瞳が、不安げに、きらきらと煌めいた。)

(『許されないと、わかっているけれど・・。』 『ここに・・。』
その想いは、かつて。 夏樹と良く似た人物が、胸に抱いた想いと、同じだった。)

***

「青葉さんを、

本当に、風見市内の病院に?」

「あそこは、今FOTの活動が盛んな場所よ。」

「そんな許可が下りるはずがないわ。」

「・・でも、このところ一度も外へ出られず。

お父様にもお会いできずに・・。 いつも話すのは、子供の頃のこと。」



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