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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter87 『決行』 87-22


我に返り、顔を上げた。)

ポッ・・

(日中あれほど、良い天気で。 先ほどまで星空が見えていたのに。
あっと言う間に、風見市の上空を。 厚い雲が覆い始めていた。)

パリリッ

(桜ヶ丘の中ほどで、足を止め、紫苑は。 眼下に見える、街並みの、
上空に垂れこめる灰色の雲を見た。)

(雲は、ところどころ、黒いマーブル模様に染まり。
遠く、雷が光る様にみえる。)

[「夕立かしら?」]

(電話の向こうの、佐織の声が、たしかに聞こえたのは、そこまでだった。)

ポッポッ・・

(雨が降り始めた。)

『誰・・?』

サーッ・・

[「紫苑、雨降るから。 わたしが買ってくるよ。」]

[「・・紫苑?」]

***

プッ ツーツー

(途切れた電話に、佐織は瞬いた。)



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