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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter87 『決行』 87-25


【良い子だ・・。 なぁ・・。】

【あいつに、会いたいだろう・・?】

【お前が思えば・・、俺はその分お前を、侵食する・・。】

【古くから伝わる、闇の魔術だ・・。】

【お前と・・、あいつが出会った時。 かけた魔法だ・・。】

【楽しいだろう・・? なぁ・・。】

【この魔法は解けない・・、俺が。 願いを叶えるまで・・。】

(冷たい気配は、紫苑のすぐ後ろにあった。
長身の身体を丸め。 フェルゼンは、血の通わないほど冷やかな頬を。
紫苑の頬に近づけた。)

「ん・・っ。」

(紫苑は息をし、なんとか身体を動かそうとしたが。 指先は震え、
まるで、背後からの恐ろしい気配に。 抱きとめられている様で、一歩も
身体を動かすことが出来なかった。)

『・・夏樹くん・・っ。』

【どこだ・・?】

【教えろ・・っ。】

(息が詰まる、紫苑の喉が、フェルゼンに操られ。 声を発しようと開いた。
まるで、頭上に垂れ込める、暗雲を抜けて来たように、乱れて四方に伸びる青い髪。
絵具を流した様に、血を思わせる赤い瞳が。 夜の雨を受けて、艶やかに光り、
すぐ側で、紫苑を捕らえていた。)

「・・。 《風見・・、総合病院・・。》」



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