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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter87 『決行』 87-29


「そんな馬鹿なこと・・。 正式な申請があったのよ?」

「え? ・・ええ。」

(看護師は、あわてた様子で、電話の向こうの相手との会話に集中していた。)

キイッ

(青葉は、車椅子の上で、雲行きの怪しくなってきた空を見上げ。
遠くから、近づいてくる雷鳴のせいか。 道路に立ち並ぶ電線が、不思議な音を
たてた気がして。 そっと、そちらに向かい、進んだ。)

『・・?』

『何か、光ったみたい・・。』

(それは、恐ろしいものではなく。 何か、不思議なものに出会う時の
わくわく感に似て、青葉を惹きつけた。)

トクンッ

トクンッ

(少し進むと、青葉はそこに。 まるで、透明なガラスの板が、
上空に浮かび、きらりと反射しながら、下りてくるように見えた。)

「あ・・っ!」

キンッ・・!

シュンッ

(青葉の声に気づいた看護師が、はっとして携帯から手を放した。)

「・・? 青葉さん・・? 青葉さんっ!」



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