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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter87 『決行』 87-30


(すぐそばに居たはずなのに。 青葉の姿は、そこに跡形もなかった。)

***

カッカッカッカッ

(白い大理石の床を、革靴が踏み締める。
足音には、怒りと。 焦りが表れ、男は一人、その巨大な建物の。
最上階へと続く豪華な金のエレベーターのボタンを力任せに押した。)

「・・聖・・!」

「よくも・・っ、よくもこんな真似をっ!」

(男は歯ぎしりし、苦痛に顔をゆがめながら、止まったエレベーターの扉をこじ開け
乗りこんだ。)

ガガッ

(エレベーターは、ゆっくりと、高層ビルを上ってゆく。
各階を示すランプの明かりの、速度は。 けして遅くはなかったが。
その一秒すら、男に、命取りになるほどの焦りを与えた。)

(男は、骨ばった両手を、怒りに震えながら組み。 天に祈った。)

『・・助けてくれっ・・!』

(男の祈りをあざ笑うかのように、エレベーターはゆっくりと昇った。)

(その特別なビルは、如何なる人へも例外を与えず、
最上階へ向かい、その人物に会うには。 そうするより、他なかった。)

***

「聖様。 石垣殿より、面会の要請が来ております。」



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