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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter87 『決行』 87-33


(思わず両手で、小さな口元を覆う。)

『・・夏樹さん・・っ///』

ゴォォォーッ バッ・・!

バシャンッ・・ バリバリバリバリッ

ゴォォォーッ ドンッ・・

(黒く流動する、まるでペンキの様な大きな流れが、見上げた青葉の視線の先、
異空間の扉を破り、青葉の居るガラスケースへ、黒い大量の飛沫を打ちつけながら。
頭上から流れ落ちて来た。)

(液体とも気体ともつかぬそれは、どろどろと、地面へ溶け出し。 汚れ、
おどろおどろしい気配が、辺りに漂い。 それは、ガラスケースの外にあり、
青葉に害を及ぼさないと分かったが。 それでも、目の前の透明なガラス面を染めた、
黒いいくつもの液の跡は、まるで触れてはいけない血痕の様にさえ見え。
青葉は身震いした。)

ビシャビシャッ・・

パリン・・ ピチャン・・

(青葉は息を飲んだ。 流れ出た液体が溶け出す中心に、夏樹がいた。
纏わりつく黒い闇は、ゆっくりと立ち上がる、夏樹の肩から、白い腕を流れ。
こちらへ振り向く白い頬を伝い。 落ちて行く飛沫は、深い紺色の髪から、
夜空のように光を映す、紺色の瞳の奥を。 怪しい光で照らし。)

(冷たく流れる気配に、その姿はまるで。
眩い月光のように鋭い光を放ち、青葉に、恐れにも似た、畏敬の念を抱かせた。)

「大丈夫。 そこに居れば、心配ない。」

(ガラスの向こうにいる、夏樹の声が、青葉には聞こえなかったが。
こちらを向き、微笑んだ口元が。 そう言った気がした。)



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