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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter88 『覚醒』 88-15


(夏樹は、フェルゼンの息遣いを間近に感じた。 それはまるで苦しみに満ち。
苦痛に耐えられずに、怒りに震えている様だった。)

(攻撃を受けているはずの夏樹は、静かに、深い紺色の瞳で、そんなフェルゼンの気配を
見つめた。)

「俺は・・お前が大嫌いなんだよ・・。」

「その面・・見るだけでおぞましい・・。 俺の目が・・汚れる・・。」

「お前の風に触れるだけで・・。 俺の全てが崩壊する・・。」

「こいつらも、そうだろうよ・・?」

(フェルゼンの周りには、千切れた闇の雫が、纏わりつき。 こぼれていた。)

「だからこんな、醜い姿になるんだ・・。 お前が見捨てた命の成れの果てだ・・。」

「くっくっくっ。 あいつの力は、美しいだろう・・?」

「あいつは、この世で・・最も美しい・・。」

「お前ごときに、触れさせるか・・。」

「それなのに・・俺がお前を壊せないとは・・!」

「俺が壊れそうだ・・っ。」

「いつになったら、あいつを取り戻せる・・っ!」

(夏樹に触れることで、晴らせるかと思った想いは、さらに強まり。 フェルゼンを
苦しめた。)

「・・その目で・・っ。」

【フェルゼン。 私は彼の目が好きなの。 まるで、美しい夜の星空の様・・。】



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