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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter88 『覚醒』 88-19


「何者だ・・?」

「その力・・、《闇の魔術》・・! どうやって・・。」

「くっくっくっ。 これからという時に・・、こんな姿になるとは残念だ・・なぁ。」

(強い水色の瞳が見下ろし。 善は思わず夏樹の胸元から手を離した。)

「(ごほっ。)」

(夏樹は大きく息をし、裂かれた胸元に白い手を添えた。 身体をわずかに起こし、
むせる様に深くうつむくと。 白い首筋から、細い小さな鎖を通し。 銀色に、
煌めく美しい指輪が、胸元から下がり、小さな音を立てた。)

チリリッ

(その指輪を目にした善は、驚きに目を見開いた。 うつむく夏樹の表情は
見えなかったが。 雪の様な白い肌に流れる、その鎖の先の小さな煌めきは、
紛れもない。 フェルゼンが憎み続けた、ルイがかつて手にしていたものだった。)

『王家の指輪・・!』

『やはり・・貴様は・・っ。』

「・・、それはこっちのセリフだろうよ。」

「そこをどけ。」

「僕じゃありませんよ。」

(善の手には鋭い爪はなく、血もついてさえいなかった。)

「ソラっ!」

「おい、待てっ!」



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