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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter88 『覚醒』 88-3


【くっくっくっ。 美しいだろう・・?】

【“闇”は、お前から全てを奪う・・。】

【リザは、お前を殺したがっているんだ・・。】

(紫の靴は、割れた結界の破片を踏み締め、深紫色のマントをはためかせながら
歩み寄るその姿は見えずとも。 1歩ごとに前面から押し寄せる重い気配に、
紫苑の身体は硬直したが。 フェルゼンの向けた視線を浴びても、夏樹は眉ひとつ
動かさず、穏やかに。 目を閉じていた。)

【わからないか? お前が存在する限り・・。

“闇”は消えない・・。】

【くっくっくっ。 だから、お前を消すのは・・惜しいなぁ・・?】

【そうだろう・・、すぐに消すのは惜しい・・。】

【それに、目的の物を探せなくなる・・。】

(紫苑は身震いした。 フェルゼンから感じられる意志は強く。
その願いは魔力となって紫苑をも捉えていた。 “目的の物”それを、見つけ出すまで、
紫苑にかけられた魔法が解けることは無い。 そのことを紫苑は知らなかった。)

(フェルゼンの姿はまるで透明で。 二人には見えず、その声も
聞こえなかったが。 それでも、夏樹のもとに届くその意志は。)

(閉ざされた、記憶の向こうに眠る。 古い思い出を、
夏樹の中から、わずかに、呼び覚ました。)

『【お前が存在する限り・・。

“闇”は消えない・・。】』



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