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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter88 『覚醒』 88-4


『「お母さん・・。」』

『「ぼくが、いないほうが。 よかった?」』

(大きな、深い紺色の瞳は。 悲しみを集めて。 大きく見開かれた。
その瞳の先に、その人はいない。)

(いつも、夏樹の守るべき人は、闇の向こうに居た。)

【《闇の力を秘めし鍵》・・】

(冷やかな唇が呪文を唱えた。 夏樹は瞳を開き、
強い紺色の瞳が、見えないはずのフェルゼンの姿を。 射る様に見つめ返した。)

「・・っ。」

【・・《解き放て》・・】

『・・思う様にはさせない。』

(夏樹は、迷ってはいなかった。 国や聖が自分へ向けた興味。 FOTのNo.3に
位置づけられ。 特別に監視されていたことは、理由を想像するには十分で。)

(それは、風の力のことではない。 それが、夏樹の想像する通りなら。
闇を無くしたいという願いに反して。 致命的だ。)

『僕は、誰かに生かされてきた。』

『だから、そう簡単に。』

『消えるわけにはいかないんだ。』

【・・《鉄の楔》・・!】

(青く伸びた爪先から、放たれた呪文は。 深紫の眩い光を放ちながら、
円形に煌めく巨大な魔法陣を出現させた。)



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