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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter88 『覚醒』 88-7


サーッ・・

(風見市の夜空に降り始めた雨が。 夏樹の頬を打ち。 二人は、繁華街の
メイン通りを模した異空間に居り。 そこにはたった二人だけで、
賑わっているはずの本来のその場所から切り離され。 誰も邪魔する者はいない。)

ザーッ

(強くなる雨は、あっと言う間に二人を濡らし。 冷たいコンクリートの路面に
横たわり微動だにしない夏樹の。 僅かな体温さえ奪い冷たく降り注いだ。)

トッ

ドサッ・・

(フェルゼンは、横向きに倒れた夏樹の肩に足をかけ、仰向きに返すと。
真上から、血の様な赤い瞳で覗き込んだ。)

【・・。 ふざけてるのか・・?】

【くっくっくっ。】

【遊んでほしいのか・・? 餓鬼が・・っ。】

(深紅の瞳は、くるくると水滴を映し。 絵具を押し流した様に、揺れながら。
フェルゼンは膝をつき、あざけり、小馬鹿にする瞳で間近に夏樹を見た。)

(その口元は、笑ったかに見えたが、突如凍りつき。 その瞳は怒りに燃えた。)

「・・。 お前こそ。」

「何を追いかけてる・・?」

(夏樹が静かに口を開き。 揺るがぬ瞳でフェルゼンを見たからだ。)

【・・何・・っ?】



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