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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter88 『覚醒』 88-8


「幻など、追いかけているなら。

きっと、僕らには敵わない。」

「使い方を誤らない人だけが。 手にすることのできるものがある。」

(夏樹にはフェルゼンの姿が見えていなかった。 だが、フェルゼンの視線の先で、
深い紺色の瞳は。 ゆっくりと微笑んでいた。)

【・・・っ。】

(降り頻る雨が、フェルゼンの青い髪を伝い、目を打つ。)

(雷鳴と、強い雨が、辺りを包み込んだ。)

【くっくっくっ・・。

あ〜っはっはっはっ・・!】

【・・馬鹿か?】

ピカッ・・ゴロゴロゴロッ・・

【お前は・・っ、自分が正しいと思っているのか・・っ!】

【この・・っ、下衆が・・っ!】

ドンッ・・ ガッ!

「・・うっ。」

(フェルゼンは、頬に触れそうな位置で夏樹を見つめ。
僅かに鼓動する夏樹の胸元に。 左手に怒りを込め、長く鋭い爪を突き刺した。)

チリンッ・・



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