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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】
Chapter89 『Friend』 89-39
(橘は、穏やかな物腰で。 主人に語りかけた。)
「買い被りすぎだ。」
「彼女が死のうと、僕には関係ないけど。 そうだね、
夏っちゃんが、悲しむからね。」
(そう言った聖の表情は硬く、朝靄の中に揺れる。 黄金色の瞳は、
どこか暗く。 清々しい朝でありながら、また。 望むものを一つ手にしたというのに、
心の中に圧し掛かる重い事実に。 明るみ出す空を、鋭く睨んだ。)
「・・欠片を回収出来なかったのは、初めてだ。」
「どこへ消えてしまったのか、確かめなければね。」
「一つも、欠かすことは。 出来ないのだから・・。」
(隣で橘は、降りゆく小雨と、霧が。 あたりを包んでいることに感謝した。)
(普段通りに振る舞おうと心がけたが。 周囲の空気を振動させる。 怒りにも似た
気配が、真っ白なスーツの肩から。 銀に流れる髪の上から。 漂い。)
(今触れれば、この人物の。 逆鱗に触れるのではないかと思われた。)
「新しい街に入って、彩の研究にかこつけて。 夏樹を調べてもらった。」
「街へ出れば、闇化が早まり。 時間をかけずに、欠片を回収出来るのではないかと
思ったからね。」
「あまり長い間。 あの子に本気を出させたくない。 手加減できない子なんだ。」
(聞いて橘は。 先ほど本部に訪れた彩が、聖に何かをもたらしたに違いないと悟った。)
「・・・。 聖様、存じております。 夏樹様のためであったと。」
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