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Novel 【* Fragment of Time * 時の欠片の道しるべ * 空と夏樹の物語】

Chapter89 『Friend』 89-40


(聖は、金色の瞳を揺らして。 笑った。)

「違うよ橘。 欠片を回収するためだ。」

「そのためには、1日でも長く。 居てもらわなければね。」

(橘は、聖に声をかけなければならないと思ったが。 何と声をかけたら良いか
わからなかった。)

「・・聖様。」

「くっくっ。 もう、最後の手段で。 いざとなれば僕も・・。」

「石垣と同じ様に。 彼を閉じ込めておくしかないようだな。」

(聖は面白そうに笑い。 いくつもの銀の指輪が光る長い指先で、顔を覆った。)

「聖様・・。」

(聖は、もう片方の手で、声をかけようとする橘を制し。 流れる銀髪の間から、
金色の瞳で視線だけ振り向くと。 再び、その顔からは笑顔が消え。 氷の様に冷たい
表情で、静かに告げた。)

「少し疲れた。 先に帰っていい。」

(橘は、屋敷の裏手へと続く。 細い小道の前で、聖を見送った。)

「・・。 畏まりました。」

(橘は、深々と頭を下げた。 顔を上げる視線の先で、眩き煌めく白いスーツが。
生い茂る葉と、棘のアーチの向こう。 扉の先へ消えて行った。)

キイッ・・

パタン



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